上野のフェルメール展

国内で開催されたフェルメール展で最多の8点(11月)が展示されるというので上野まで行くことになった。以前、デン・ハーグでの展覧会をみたことがあり、その時との違いがいろいろと考えさせられた。2018年の東京展と、1996年のデン・ハーグ展(オランダ)と比較してみる。

 

会期

東京 2018年10月5日〜2019年2月3日

オランダ 1996年3月1日〜1996年6月30日

 

オランダ展に先立ち、ワシントンのナショナルギャラリーで開催、歴史的大雪と公務員のストで一時開催が危ぶまれていた。ワシントンでは『牛乳を注ぐ女』と『恋文』は展示されなかった。

 

開館時間

東京 9:30〜20:30

オランダ 9:00〜18:00(会期後半は0:00まで延長)

 

みた日

東京 2018年11月29日(木)

オランダ 1996年3月20日(日)

 

場所

東京 上野(半径500kmに約1億人)

オランダ デン・ハーグ(半径500kmに約2億人)

 

会場

東京 上野の森美術館

オランダ マウリッツハイス美術館

 

フェルメール展会場(1996年)

 

会場の規模は上野の森美術館のほうが大きい。マウリッツハイス美術館はオランダ建国の功労者マウリッツの私邸を美術館として公開、フェルメールやレンブラントのコレクションで知られる。この展覧会のために特設のスペースを作った。入場は美術館裏口から、運河の上に仮設のテントを設け、廊下を渡って本館に入る。

 

会場入り口の仮設渡り廊下(テント)

 

 

チケットと入場規制

東京 2500円(前売り)、タイムスロープ制

オランダ 1200円(前売り)、タイムスロープ制

 

オランダ展のチケットは当時のヨーロッパの美術展としては高めであるが、23点集まっているのだから納得の価格。それと比べると東京展のチケットは22年の開きはあるにしても高い。両展覧会とも当日券が若干用意されている。

入場はどちらもタイムスロープ制を採用しているが、実際に入れた時間は大きく違った。

東京展は11時〜のチケットで11時ちょうどに約100mくらいの列に並び、入れたのは30分後。

オランダ展は11時〜のチケットで11時ちょうどに入口に着き、すぐに入れた。チケットは前日に泊まったホテルで入手。どちらも入ったら閉館までいられる。

 

展示作品

東京 8点(11月現在)

オランダ 23点

 

20世紀に開催された展覧会でもトップの内容。『絵画芸術の寓意』は当時修復中のため展示できず、今回東京展で展示されている『リュートの調弦』もこのときは損傷が激しいという理由で展示されなかった。その代わりバッキンガム宮殿所蔵のため滅多に見ることができない『音楽の稽古』が展示された。

 

展示室

東京 8点の作品を1室で展示

オランダ テーマごとに4室に分けて展示

 

資料

東京 入口でブックレットを配布、日本語のみ

オランダ 入口でブックレットを配布、4ヶ国語それぞれ用意されていた

 

どちらの資料も簡易なもので、文章のみ。

 

照明

東京 ハロゲンランプ、自然光なし

オランダ 自然光(窓は紫外線遮断処理)が基本

 

作品の照明が最も違う印象だった。東京展はハロゲンランプのせいか、赤色が強調され、色バランスを崩しているようにみえる。明るさを落としているので暗部はより暗くなる。以前の展覧会でみられた保護ガラスの反射はかなり抑えられている。

オランダ展は会場が小さいので十分な自然光が入る。何と言っても電車で10分のデルフトと同じ光でみることができた。

 

展示の状態

東京 作品から約1m離れて柵があり、それ以上は近づけない

オランダ 作品との距離に制限なし

 

これも大きく違っていた点、1m離れていると細部がわからない。画家だったら、マチエールを確認したいと思うのにできない。特に『赤い帽子の女』のような小品には遠すぎる。オランダ展ではじっくり細部をみることができた。

 

動線

東京 展示順路の最後、部屋に入ると順路が特に指定されていないので、ランダムな順番でみることができる。これだけの規模の展覧会で順番を設けないのは評価されてよい。

オランダ 緩い規制があり、第1室から順番にみるようになっている。3月時点では最後までいって再び戻ることができたが、展覧会後期は一方通行となった。

 

時期が展覧会前期だったせいか、余裕があり、何度も行ったり来たりできたのが幸いだった。

 

関連展示

東京 別室にオランダの同時期の絵画作品を展示、一室をビデオ上映にあてていた(見なかったので内容不明)。

オランダ 地下の部屋で展覧会開催時点での科学的調査結果を紹介、特に展覧会にあわせて修復された『デルフトの眺望』と『真珠の耳飾りの少女』について。

 

オランダでは国を挙げて本気で開催したので、関連企画展の充実ぶりがすごかった。

デン・ハーグ

Dutch Society in the Time of Vermeer

Den Haags Historisch Museum(フェルメール展会場入口の向かいの建物)

1. March - 2. June 1996

当時のオランダ社会についての図版、公文書に残されているフェルメールのサイン、作品に登場した小物等を展示している。

図録は"Dutch society in the age of Vermeer"(f39.50), ISBN 90-400-9823-9

 

The World of Learning (Cartography and scholarship in the 17th cent.)

Museum van het Boek-museum(場所がわからなかったので未見)

1. March - 2. June 1996

 

The Men of Emmaus

9. April - 7. July 1996

Museum Bredius(フェルメール展会場入口前の広場の反対側、まだ開催されていなかった)

フェルメールの贋作で有名な”メーヘレン事件”の中心人物、ハン・ファン・メーヘレンの「贋作」以外も含めた作品展

 

その他関連コンサートも開催。小さな美術館が私的に企画したものもあった。

後に知ったところではロッテルダムでグリューナウェイの講演もあったそうである。

 

デルフト

市制750周年と重なってとても力を入れている。

 

Delft Masters - Contemporaries of Vermeer

Museum Het Prinsenhof

1. March - 2. June 1996

フェルメールと同時代、同場所を中心に活躍した画家たちの作品展。これだけでもかなり見応えがある。会場のプリンセンホフは修道院でオラニエ公ウィレムが隠棲し、暗殺された場所である。

 

Vermeer Interior

1. March - 2. June 1996

Museum Lambert van Meerten(日本では「タイル博物館」の名で有名)

 フェルメールの作品に出てくる室内を複数の作品から再現。上映されているビデオは短時間ながらも興味深い。この他作品に登場する小物も展示。プリンセンホフから北へ旧教会を過ぎたあたりにあり、古いデルフト焼きがコレクションされている。内部は撮影禁止であった。

 

混み具合

東京 平日だったせいか入口以外はそれほどでもない

オランダ 会期前半でも激混み(後半はもっと混んだらしい)

 

東京展で気になったのは、当の絵を前にして解説を読む人たち。一生に一度の体験(しかも唯一)かもしれないのに何で解説を読む?それと音声ガイド、作品体験の妨害と思わないのだろうか、不思議である。

 

展覧会文化の違いのせいか、オランダ展では日本以上に激混みだったにも関わらず、みたい作品の前に長い間いることができ、周囲の人も気にしていなかった。自然光のもと至近距離まで近づけたので、細部もじっくり観察できた。驚いたのは、車椅子の来訪者がきたとき、周囲にいた人たちがさっと場所をあけたことだった。日本ではありえない。

 

展覧会グッズ

公式CD

東京 なし

オランダ 当時の美術展には珍しく公式CDが発売されている。展覧会のために特別制作したものではなく、既発売のCDから選ばれた。展覧会のシールが貼られているが、カバーはフェルメールの作品でないのが惜しい。

The Golden Dream 17th-Century Music from the Low Countries.

Musique des Pays-Bas au XVIIe Siecle

The Dewberry Consort

1993, USA, harmonia mundi 907123

 

 

記念切手

東京 なし

オランダ 切手3枚と小型シート

 

その他グッズ

東京 グッズはマニュアル化されたのか、どの展覧会も同じようなもの(トートバック、クリアファイル、マグネット等)で絵柄だけが違う。

オランダ ワインがたくさん並んでいた。『牛乳を注ぐ女』に描かれたパンは市内のパン屋で買えた。

 

泊まったホテルでは「フェルメールディナー」というのがあり、頼んでみたらきのこ料理をパレットに乗せたものが出てきた。なぜきのこなのか不明。


          ■■                 ■■■

同時代の音楽論同士でツーショット

 

 

 


                   ■ ■           ■■       ■

ヨハネ讃歌とランゴバルト史。

どちらも日本語で読めるありがたい時代。

 

 


   ■   ■  ■    ■■

画商ヴォラールが企画した『賽の一振り』は、作者の死の直前まで独特なレイアウトを中心に校正が行われ、ルドンの石版画も準備が進んでいた。復元されたヴォラール版がアメリカのタイポグラフィーを得意とするLucia Marquandから刊行された。フランス語版と英語版の2冊構成となっている。

 

 

 

 

空間の中の詩句

 

ヴォラール版復元の試みはこれが初めてでなく、フランスのLa Table Ronde(TR)から2007年に、Ypsilon(YP)から2010年に出版されていた。TR版は自筆原稿のファクシミリを含むが、やや小さな判型、YP版とLM版はほぼ同じ大きさ(LM版のほうが全長で5mm長い)、厚い紙を使用していてLM版は若干クリーム色になっている。TR版は行路社から日本語版が出ている。

 

 

左がYpsilon版

 

書体は作者により指示されていたので、YP版とほぼ同じであるが、行間や文字間が若干異なっている。

 

 

左がYpsilon版

 

 

「主」の登場、下がYpsilon版

 

LM版は末尾にルドンの石版画が収録されている。直前になって輸送中の事故で石版が失われ、4枚の予定が3枚となり、欠けた1枚の部分を新版では見開きで空けられている。ルドンの構想ではテキストと対立しないように着色した紙の使用を考えていたが、それは再現されていない。Ypsilon版では、子供を描いた石版画を表紙においている。

 

 

 

TR版には初出のコスモポリタン誌や校正原稿のファクシミリを収録している。縮小されているのが惜しい。

 


■ ■ ■ ■ ■

Michael Fest

 

 


■ ■ ■ ■ ■

今年の十五夜、浅草まで行ってお団子を調達してきたのに雨と雲で見れず、月なき月見となった。

 

鳥獣戯画の時代に現れたうさぎ、これがうさぎだったとはつい最近知った。

 

羽根うさぎ

 

鼻のあたりにうさぎの名残り

 

11時過ぎにようやく現れたお団子のような十五夜、浅草のお団子は既に食べた後だった。

 

 


■ ■ ■ ■  ■

東方教会の精髄 人間の神化論攷 聖なるヘシュカストたちのための弁護

グレゴリオス・パラマス/大森正樹訳、知泉書館、2018年

 

 

東方正教会、しかもヘシュカスム論争に関連する神学書が出版されるのはとても珍しい。

 

神は存在しているものを超えるのみならず、神をも超えるものであり……

 

エックハルトも同じようなことを言っていた。

パラマスは1294年生まれ、エックハルトは1260年頃の生まれであるから、偶然にもほとんど同じ時代を生きていた。

 


     ■■■■■

インマゼールと伊藤綾子のデュオで、ピアノは1877年製エラール(ブリジストン美術館所蔵、85鍵、7オクターブ)を使用している。ピッティーナにこのエラール・ピアノの解説と細部写真が出ていて、それをみると平行弦、3本の弦は独立して張られているようである。

 

当初は『海』のピアノ連弾を演奏するということでチケットを購入したが、その後変更されてしまった。

 

演奏作品は今年メモリアルイヤーのドビュッシーで、『忘れられた映像』と『喜びの島』はソロ、残りは連弾。

『小組曲』

作品自体に大して魅力がない(『夢』がいいという人にはいいかもしれない)。

 

『牧神の午後』への前奏曲(プログラムでは『牧神の午後への前奏曲』となっている)

作曲者によるピアノ連弾版で、この作品に限らず自作のピアノ編曲が多く、『ペレアス』も編曲している。

連弾版とは明らかに別の独奏があり、ドビュッシーはマラルメの前で弾いている。独奏版があったら是非聴きたいが、楽譜にはならなかったらしい。

 

もともとこの作品は劇として構想され、そのときの舞台美術をルドンが担当する案があった。その後、ニジンスキーのバレエでも再びルドンに打診されたが、ルドンは断り最終的にバクストが担当した。

 

ルドンに依頼がくるくらいであるから、この作品には明晰さの先にある曖昧さが必要であるが、ピアノ演奏ではそれほど現れず、単調になってしまった。

 

『雲』、『祭』

ラヴェルの編曲、ここというところで出遅れが目立った。

 

『祭の日の朝』

ドビュッシーのオーケストレーションを手伝っていたカプレの編曲、オーケストラはいい意味での悪ふざけがあるのにピアノ演奏では真面目すぎた。

 

インマゼールの『海』について以前の記事

 

オーケストラ演奏については期待外れだったので、ピアノに期待したが(ピオーとのドビュッシーの歌曲はそれなりによかった)、こちらも期待外れに終わってしまった。

 

エラールのピアノはとてもいい音だったが、演奏者は引き出せていない感じだった。

 


  ■    ■■■■

『魔弾の射手』でドイツ「国民オペラ」らしいと思ったのは、登場人物のなかに森林監督官という役職の配役があることだった。ヴェネツィア共和国に「海の監督官」があったのと同様で、森が生活の多くを占めている。

 

 

著者はアイフェルのヒュンメルという所で森林管理官として管理している。場所を調べてみると、ミュンスターアイフェルの南10kmにある村だった。

 

ミュンスターアイフェルの森

 

ヨーロッパの森はブナのイメージ、それとは別に針葉樹が出すテルペンについて興味深い。

 

針葉樹はテルペンを発散する。テウペンとは本来、病気や寄生虫から身を守るためにつくられる物質なのだが、その分子が待機に混ざると湿気と結びついて凝縮する。その結果、普通の陸地の雲よりも2倍ほど密な雲ができる。この雲には二つの利点があることが知られている。まず、雨が降りやすくなること。そして日光の5パーセントを反射すること。おかげで、その地域の気温が下がる。涼しくて湿っぽい−–針葉樹が好む環境のできあがりだ。この仕組みが地球温暖化のブレーキとなっている、という説もある。

ポンプとしての森

 

森の葉っぱの数くらい知らないことは多い。

 

アイフェルの森

 

樹木は葉っぱを虫にかじられると周囲に警報を伝える、という一文があった。ちょうど植物で同様の機構を可視化したという記事が出ていた(National Geographic 9月14日版)。


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2巻本

 


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