シャラントの川辺

大きな塔に小さな塔、コーンのような屋根

 


ラウンドタワー


ラウンドタワー アイルランドの不思議な塔の物語

アルケミスト双書

ヘクター・マクドネル/富永佐知子

創元社、2014


ぽつんと孤立して建っているアイルランドの円塔(ラウンドタワー)は『ブレンダンとケルズの秘密』でも独特な存在感と役割を持っていた。ヨーロッパ大陸に建つ塔の古い形式ではないかと思っていたが、ほとんど言及する本がなかった。そのなかで、円塔だけをとりあげた本があるのを最近になってみつけた。


『ハリー・ポッター』シリーズを出している Wooden Books のシリーズで、創元社が「アルケミスト双書」というシリーズで出版したうちの一冊だった。このシリーズはイラスト、ブックデザインがよく、簡単にまとめられているので前にも『黄金比』を買っていた。『ラウンドタワー』は昨年出たばかりで新しい。


全65ページの小著


素晴らしい図版


円塔のほうが正方形や多角形の塔より建て易いのではないかと思う。矩形だと隅石を置くための測量が必要になるが、円塔なら縄と棒で円を地面に書けばよい。こうした塔がアイルランドに建てられたのは、塔の実際的な機能のほかに、象徴的(これはマグダ レベツ・アレクサンダー/池井望『塔の思想―ヨーロッパ文明の鍵』に詳しい)な面もあってのことだった。最初に建てたのは修道院で、著者は「厳格な宗教目的だった」としている。


地中海にはアレクサンドリアの大灯台や、ローマの市門塔や城塞塔を建てる技術があったのに古代末期からメロヴィング時代まで塔を建てるのに消極的だった。「バベルの塔」のことが念頭にあったのかもしれない。


後半は大陸のラウンドタワーがとりあげられている。「ザンクト・ガレンのプラン」にも二つの円塔が記されているように、カロリング時代に入ってラウンドタワーが大陸に建てられ始めた。ただし、大半の塔は聖堂に附属している。


大陸の塔


ロマネスク時代になると、円塔から角塔になっていくが、一部では12世紀後半に印象的な円塔が建てられている。

多角形の塔の上の円筒


四つの円塔


円塔に八角形の屋根が載る珍しい例


円塔は世俗の建築の中にもう少しだけ生き残ったようである。そんな塔をコンブレーやマッレスで見た。


洋梨の木とラウンドタワー



Au-delà


山の上に塔が見えると、とても気になる。

この地域を紹介するサイトには Stiegen zum Himmel とあり、まさにその感じ。


背後にみえるのは天使が舞いおりたところ


教会が建つずっと前はケルトの聖域だったのかもしれない。


小山の上の教会




片方だけ


二つ揃わないことはよくあり、それはそれでもよい。




二つ揃っても、それぞれの主張が違うこともある。



双子のように揃ってもどこか違うところがある(この塔は同じに見えても1mだけ高さが違う)。



二つが揃って調和することは稀れなのかもしれない。




三つの塔


『三つの塔』は1995年のクレー展でも展示された作品で、矩形と三角形とグラデーションで構成されている。この三つの塔はそれぞれ間隔と高さのいずれもバランスよく配置されることで上昇感のある垂直性を強調している。その一方で、下側では水平方向に結合することで水平性も強調している。作品はこの異なる二方向の拮抗と協調の調和がみられる。


パウル・クレー、三つの塔


 三つの塔がつくりだす緊張感と、みる位置を変えることで生じる多様性はプルーストが『コンブレー』の最後で記している通りである。

 塔が二つではなく三つになると、外観としての設計は格段に難しくなる。教会建築でこの困難な課題に挑戦したのは、カロリング時代のフランク領で活動した建築家が最初らしい。図版でのみ知ることのできるサン・リキエ修道院の聖堂は最も知られた作例であるが、元来はヴェストヴェルクの発生と関連する。ヴェストヴェルクの特徴は「大小三基(中央が最も大きな鐘塔になる)の塔を並立させた雄大で変化に富む記念碑的な外観」(クーバッハ)にあり、後には二塔型に吸収消滅することを考えると過渡的なスタイルであった。後世に残らなかったのは、設計バランスの困難さとファサードの意味の変化にあったと思われる。


 クレーの『三つの塔』をみたとき、似ているとおもったのはマリア・ラーハの西正面であった。


宮中伯の建築家と0世紀の画家が「三つの塔」の配置について、同じ解決をしているのが興味深い。

地中海側の教会建築は当初、「バベルの塔」やローマの城塞塔のように、建築技術があったにもかかわらず塔を持たなかったようである。一方、ゲルマン圏の特にフランク領を中心に布教された当初から塔があった。


その他の三つの塔


ザンクト・ミヒャエル教会、ヒルデスハイム


サン・マルタン教会、マルムーティエ


サン・ジェルトリュード教会、ニーヴェル



双塔


西ヨーロッパ、特にアルプス以北の教会では西側ファサードに一対の等価な塔を配置することが多い。


ザンクト・カストール教会、コープレンツ、9〜12世紀


双塔はカロリング時代に遡るものの現存例はない。この時代ではむしろ「ザンクト・ガレンのプラン」に記された図面がよく知られている。


ザンクト・ガレンのプラン


「プラン」によると、塔は大天使ミヒャエルに捧げられ、聖堂を霊的に守護する意味もあった。「プラン」の二本の塔は聖堂本体から独立して建てられているが、最初の頃の双塔は西側躯体の左右に控えめにつけられたり、西側躯体の上に乗せられたりしていたようである。


巨大な西側躯体の横についた塔、マーストリヒト、1000年頃


ロマネスク時代の到達点、リンブルク


ゴシック時代にも双塔ファサードタイプは流行したが、前時代よりも高さが増し、資金も増したので未完成に終わる例が続出した。アントウェルペンのカテドラルでもファサードに二つの塔を配置したが、高さは全く違っている。最初から非対称にする予定ではなく、同じ高さの塔を建てる計画であった。


未完成の南塔


ストラスブールも


完成はしても、対称性が失われる場合もあった。シャルトルでは建築年代の違いのため非対称となってしまったが、別の美しさを獲得した。


シャルトル


ケルンでは長らく工事途中のまま中断され、未完成に終わると思われたが再発見された設計図をもとに、19世紀末になってようやく完成することができた。ここでは対称な塔になり、市街を圧倒している。


ケルン大聖堂


ミュンヘンのフラウエンキルヒェの塔は、1mだけ高さが違う。


フラウエンキルヒェ



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