母岩をみる


ずっと前に入手したトラス中のアウイン、1mm程度の微結晶が散在している。



こちらは玄武岩に含まれるアウイン、サイズは4mm程度。




別の方向から


同じ石の中に埋もれていた。すぐ近くにオキシフォロゴバイト、六角柱で透明なのは何だろうか。



アイフェルの玄武岩は暗灰色であるが、内部に大量のアウインの結晶を内在させているものもある。


Nidermendig, mindat.org



まりも石



ミネラルフェアで見つけた緑鉛鉱はまりものようなまるっこい結晶がたくさん集まっているように見えるが、結晶系が P63/mであることと、まりもが単純に丸くないことから、まっしろしろすけのように針状結晶が集まっているのではないかと思っていた。




緑鉛高を性能のよい顕微鏡でみる機会があった。「まりも」を見るとやはりエメラルドのような色をした小さい針状結晶が無数に集まっていることがわかる。


まりも


六角形の針状


放射状になっている


緑の蛇が住むのはこんなところではないかと思える。


珊瑚礁の海底のようにもみえる


やや白っぽい部分は塩素が脱離したのかもしれない。


オキシフォロゴパイト


5年前のミネラルフェアで見つけた石。アイフェルのトラス(浮石質凝灰岩)に板状の褐色微結晶として含まれている。


Oxyphologopite はネット上で調べてもほとんどヒットしない(2015年6月現在Googleで5件ヒット、うち1件はミネラルフェアの記事だった)。販売したお店にも出ていない。mindat.orgのサイトに数少ない情報が出ていたので見てみると、組成は K(Mg,Ti,Fe)3[(Si,Al)4O10](O,F)2、形の上では雲母に似ているようにもみえる。


Oxyphologopite


トラスに埋もれている


別の部分



まっしろしろすけ


家に来たまっしろしろすけ君は雪だるまのような格好をしている。

ミネラルフェアのブースでみたときは一瞬、カマンベールチーズか、灰色カビ病のカビに覆われてしまった大福かと思ってしまった。


ラビットテイルと呼ばれているらしい。



針状結晶の塊で、光があたると、きらきら光り、結晶質の素性をあらわす。


ちくちく


オケナイトという名前で、組成はケイ酸カルシウム Ca10Si18O46・18H2O である。


発見者はローレンツ・オーケン、ゲーテの推薦でイエナ大学の教授になったが、後(ゲーテの没後)になって言論弾圧の強いドイツを嫌ってチューリッヒに移った。ドイツ観念論の自然哲学者を代表し、独特でロマン風・神秘主義的な科学思想を展開し、19世紀後半には時代遅れとされたが、細胞の概念や先駆的な進化論など最近は再評価もされている。光と色彩に関する論文ではゲーテの色彩論を先取りしていた。



緑鉛鉱


ミネラルフェアで見つけた緑鉛鉱 Pyromorphit を帰ってから調べてみると、いろいろわかってきた。



まず、産地は Grube Gute Hoffnug(よき希望の穴?), Bleibuir Mechernich とラベルにある。最後が地名で、場所はドイツのアイフェル、ミュンスターアイフェルから山一つ向こうということがわかった。アイフェル産の石を探してアウインしかなかったのに、偶然(地名は知らない場所だった)買ったものがアイフェルだったので幸運だった。


そうなると、礼文島の緑ではなく、アイフェルの新緑のイメージになる。


緑鉛鉱の緑のような鮮やかさ


ミュンスターアイフェルは古くから鉱山が開発された拠点である。現在は全くの山の中の小さな町なのに、中世には司教座が置かれ、貨幣鋳造権もあった。


緑鉛鉱はPb5(PO4)3Cl、六方晶系アパタイト構造(Sp. Gr. P63/m)、アパタイトの仲間ということもわかった。塩素は安定なのだろうか。塩素がなければ白色になるようである。




ミネラルフェア2015


6月恒例のミネラルフェアは今年も開催中、初めて初日午前中の会場に行く。


ミネラルフェア初日、午前


前回行ったのは記録によると2010年だったので、5年ぶりになる。アイフェル産かチロル(ドロミテ)産で何かいいものがあれば、と思って見て回ったけれどアイフェルのアウイン以外は見つからなかった。


フランスのお店はいいものを出しているが、値段も相応。ドイツから毎年出している Peter Pittmann Fossilien は化石を主に展示していた。隅で鉱物も少ないながらも充実していた。縞瑪瑙のような珍しいフルオライトのプレートが一枚だけあったのと、阿寒湖の湖底(まりもがたくさんいるイメージ)のような鮮やかな緑の Pyromorphit (緑鉛鉱、これも一つだけ)をゲットできた。


Fluorite


Pyromorphit


この緑色は、一昨年行った礼文島のイメージもある。


礼文島スコトン岬


入口近くにあるインドの Primme Minerals India で、もこもこしたものを見つけた。まっくろくろすけがまっしろになったようなまんまるの鉱物であるが、目はない。残念なことに飛んだりはじけたりはせず、おとなしくしているが、それはそれでよいかもしれない。。


まっしろしろすけの中から、雪だるまみたいなのを選んだ


石の内側で育つらしく、インドのデカン高原で多く採れるらしい。店員は沸石と言っていたが、あとでオーケナイトという名前であることがわかった。


お昼は隣のホテル



宝石になった魂


世の中の宝石で真珠を除けば、いつ生成したのか特定出来るものはほとんどない。年代が特定可能な希有の宝石がアウインである。2010年を基準にすると12923年前の春〜初夏、東アイフェルのラーハ湖火山が噴火した(詳細)。


噴火の様子は昨年公開されたVulkan(日本ではVolcanoとしてDVDが発売された)で忠実に再現されているが、ラーハ湖の噴火は映画のものよりも規模が大きかった。数週間の間に少なくとも4回の噴火があり、湖周囲では火山灰が数十メートル積もり、イタリアやポーランドまで降った。


噴火初期段階(Volcano, 2009年, ドイツ映画)


氷河期末期、旧石器時代で噴火の直前まで湖周囲には動物や人が定住していたが、噴火で生命の痕跡は途絶えた。入れ替わるように流れ出た溶岩が冷えて玄武岩となった中にアウインが結晶した。


噴火の最終段階、溶岩流(同上)


アウイン、母岩は玄武岩


昨年のミネラルフェアで入手したアウインは、よくあるトラス(浮石質凝灰岩)に含まれるタイプではなく玄武岩に含まれた珍しいものだった。


1815年7月にゲーテはラーハ湖を訪れた。ゲーテの『メルヒェン』次の一節がある。


犠牲にされる前に犠牲になる決心です。


犠牲になることを受け容れた蛇はランプの魔力で美しい宝石に変えられ、川にかかる橋として再生する。


Goethe, Märchen, by David Newbatt


ラーハ湖一帯で採れる宝石アウインは、噴火の犠牲となった人や動物の魂であったのかもしれない。このごろそう思うことがある。


アウインのような青色を湛えるラーハ湖



Volcanoつづき


映画 Volcano(完全版)の続き。


ロルヒハイム湖(火口湖)の火山爆発は12922年前に起こったラーハ湖の噴火をモデルにしている。

ラーハ湖は今から12900年の初夏に噴火した。発掘された道具から、旧石器時代で湖周辺に直前まで人が住んでいたこともわかっている。


判明している爆発の状況は次のようになる。

まず1000℃の水蒸気が一瞬のうちに飛散する水蒸気爆発が起こった。

次いで噴火、原爆500個に相当するエネルギーが放出されたという。シミュレーション結果によると噴煙は30分で直径80km、高さ20kmまで上がった。短い期間に何回か噴火が起こっている。


ラーハ湖、噴火から30分後の噴煙

C. Tayler, Volcanic Degassing 213, 307, 2003から


噴煙は40km上空まで達した。同時に大量の火山弾が落下、大きいもので直径数メートルの火山弾も含まれている。


火山弾、直径1メートル


引き続いて、テフラ(火山性降下物)が長期間降下した。テフラは火口周辺で数メートル積もり、ストックホルム、ポーランドやイタリアでも発見されている。


同時に溶岩の噴出、雨と共にテフラが火砕流となり北西方向へ流れてその先のライン川をせき止めてしまった。ライン川はやがて決壊して下流では大洪水が起こった。また、大気中に火山からのエアロゾルが長期間とどまり、ヨーロッパ全体で寒冷化が起こった。火口一帯は人間を含む生物の痕跡が消えた。植物が再び蘇るのは千年単位の時間がかかっている。このときの噴火により玄武岩や「アイフェルの宝石」アウインが生成した。


現在のラーハ湖


南西から、右に直径1.5メートルほどの火山弾が二つある


映画では注意しないとわからないくらいの程度で、その後のヨーロッパが冬の時代になることを暗示している(アイスランドの噴煙でさえ、大きな影響があった)。設定されたロケーションがライン川から離れた場所だったので、洪水だけは免れたようである。


ミネラルフェア


ミネラル(鉱物)に対する興味の持ち方はヨーロッパと日本ではかなり違いがあるようにみえる。ヴァイマール候国の鉱山監督官だったゲーテは趣味と実益を兼ねて鉱物コレクションを持ち、当時の分類に従って整理していた。その成果は「ゲーテ鉱」と呼ばれる鉱物の発見だけでなく、『メルヒェン』や『ファウスト』のような作品に文字通り「結晶」した。鉱物は文学的テーマとしてシュティフターにもつながっていく。


昨年のミネラルフェアの特別展は「石の文化史」で、ゲーテの業績を「ゲーテ鉱」と共に展覧していた。一方、日本ではごく一部を除くとあやしさいっぱいヒーリング系か、石マニア(自分のアイデンティティを石に求めるが、必然性が感じられない人)になってしまう。


今年のミネラルフェアでは、ドイツのお店で掘り出し物を見つけた。一つは商品をアルファベット順にきちんと並べた、いかにもドイツらしいお店だった。アウインの小さな粒を沢山出していた。昨年掘ミネラロジーのブースで見つけたような玄武岩についたままのものはなく、どちらかというとルース用だった。高いのでパスしたが、同じアイフェル産のOxyphologopiteという鉱物を見つけたのでそちらをゲットした。


Oxyphologopite


見た目は誰も買いそうにない地味な石であるが、よくみると小さな結晶が埋まっている。アウインもそうだったけれど、アイフェルの鉱物はこうした微視的な大きさのものが多いそうである。ラーハ湖南のメンディッヒ産。採掘地から考えると12900年前の噴火で生成したものかもしれない。


もう一つは大理石や石灰岩などの石材産地として知られ、始祖鳥も発見されたバイエルンのゾルンホーフェンの魚の化石。これもドイツのお店。


Fossil, Solnhofen


これも化石としてはややありふれたものと思われがちであるが、石になってもぴちぴちしている魚が面白いのでゲットした。


Leptolepis sprattiformis


この魚、前に紹介したにルドンの Poisson d'avril に似ている。

ルドンのリトグラフはゾルンホーフェン産の大理石を石版に使っていた。石版の大理石にはこのような化石が含まれることが多く、中にはこの化石のように表面に出たものもありそうだから、こうした化石の魚をみて四月の魚を思いついたのかもしれない。





玄武岩

これまでに、「ゲロルシュタイナー、アウイン、修道院」、最近の「ドイツの火山」で登場した玄武岩 Basaltは 、SiO2−Na2O-K2O-Al2O3を主成分とする火成岩で、溶岩が冷却凝固した岩石である。


天然石材のうちで最も高強度なので構造材として用いられ、特にアイフェル産玄武岩は高品質であった。耐候性に優れることから、ローマ帝国は里程標として帝国内各地にアイフェル産玄武岩を利用し、現代でも原子力発電所の炉壁として選ばれた石材である。


ローレンツフェルセン付近の玄武岩層、ラーハ湖東岸


ラーハ湖近郊(この画像はPlaidt産)で産出される玄武岩は暗灰色

よく見ると結晶質の介在物がある


アイフェル産玄武岩を最も有効に使用しているのが、シュパイアー大聖堂の交差部分である。地上から30メートルの高さに巨大なドームを架けるため、150km以上離れたアイフェルからわざわざ切り出された。11世紀のことである。


シュパイアー大聖堂内部、アプシスと交差部


ドームを支えるアイフェル産の玄武岩


この時代、交通がまだ整備されていなかったので、教会を建てるときには近郊で採れる石材を用いるのが普通であった。このため、ワインと同じようにロマネスク時代の教会はその土地独特のものとなる。


シュパイアー大聖堂も外壁などには近郊のライン産砂岩を用いているが、ドイツ皇帝が最も力のあるときに、クリュニーや教皇庁に対し威信をかけて建てた現存最大のロマネスクモニュメントである。


シュパイアー大聖堂、外壁材は主に近郊の砂岩


アイフェルでの玄武岩石材採掘、Vulkanpark Informationszentrum, Plaidt


内部で最も重要なのは袖廊と身廊が交差する交差部で、直下に皇帝祭壇があり、その下にはザーリア家の霊廟であるクリュプタがある。ハインリヒ4世はこの部分を最もモニュメンタルな空間にしようと、巨大なドームを架けた。高層にヴォールト架構させることはゴシック時代に入って普及したが、11世紀には皆無であった。このドームを支持可能な石材として選ばれたのがアイフェルの玄武岩であり、架構から900年経った現在もドームを支え続けている。


交差部を支える玄武岩の柱




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