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骨展

初のミッドタウン行き。目的は前から気になっていた骨展であった。

骨とは何かと縁があって、動物から人までいろいろ見る機会がこれまでにもあった。

この骨展のテーマは脊椎動物の骨構造から人工物(工業製品)の機能と形との関係に注目しようというもの。


脊椎動物の骨はコラーゲンとアパタイト(最近はアパタイトライクな、と表現される)の複合から構成されている。死んでも骨だけは残ることから、不動と思われているが、骨は(骨代謝サイクルの中で)常に創造と破壊が同時に繰り返されている。ミクロなレベルでは、骨芽細胞、骨細胞、破骨細胞といった細胞が関与し、成熟した骨は血管を中心とする層板構造(ハバース系)をとる。マクロなレベルでは、「ヴォルフの法則」で知られるように、その場にふさわしい機能に合ったように骨構造は造りかえられる。大腿骨骨頭を縦割すると、細かな梁がゴシックのリブ(これは肋骨という意味であるが)ヴォールトのように見事に荷重を支える梁のような構造をしていることがわかる。最近もNature誌でこうした構造が改めて注目された。


「肋骨穹窿」、ストラスブール大聖堂


生物硬組織の見事な例として、骨ではないが、真珠母貝の構造がある。虹色の光沢を放つ貝殻は、炭酸カルシウムとコラーゲンがナノレベルで互層構造をとることで獲得しているが、人工的に作ることはまだできない。


以前、ヴェサリウスの『ファブリカ』原書を見る機会があった。『ファブリカ』は解剖図に興味があれば一度は見てみたいと思うもの。ボードレールが詠ったように、解剖学的正確性と美が両立した図版であった。


耕す骸骨

Le Squelette labourer


屍めいたたくさんの本が

古代のミイラのように眠る

あの埃っぽい河岸にころがる、

人体解剖図の版画類


その題材は陰気なものながら、

誰かむかしの芸術家の謹厳さと

知識の深さの効あって、<美>の息吹の

通っている、ああした絵図の中に


見受けられて、このように隠秘で

怖ろしい事柄を、一段と完璧に仕上げるもの、

それは、地を耕す農夫のように鋤をふるう、

<皮を剥がれた人体>や、<骸骨>のすがた。

『悪の華』、阿部良雄訳、ちくま文庫


「地を耕す農夫のように」、ヴェサリウス、『ファブリカ』から


これまで見た骨の中で最も驚いたのは、スイスの山の中の教会に於いてであった。この教会は(以前書いたように)カロリング建築の貴重な作例であった。聖堂の南壁に寄りかかるように設けられた小屋があり、ふと覗いてみると、



明らかにこの界隈数百年の蓄積がここにあった。

実はこの教会、スイス鉄道観光の目玉であるフィリズールのラントヴァッサー鉄道橋のすぐ近くにある。世界遺産にも登録された鉄道橋は、パックツアーだとちょうど教会のあたりで写真に収めようとして、観光客たちは列車の右窓を陣取ろうと一騒動始めるのである。

Mement Mori !


Landwasser Viaduct, Filisur


納骨堂の真下を走る「氷河特急」


骨展に戻ると、展示された作品をいろいろ動かしてみて、予想しなかったことが起こるのが楽しい。逆にデザイナーはこんな風に発想するのか、というのもなかなか新鮮であった。ただ、骨はもっと複雑でヒントに富んでいるのであるから(骨の再生は再生医療で最も進んでいる分野一つ、分子生物学的知見も多い)、徹底的にリサーチして医学の最先端に挑戦するような作品を提示して欲しかった。


会場入口


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  • 2017.10.17 Tuesday
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