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ヨーロッパの中世美術(浅野和生)

中公新書2014、2009年、ISBN:978-4-12-102014-7

ビザンティン美術が専門という著者によるヨーロッパ中世美術の楽しみ方。


新書版の制約から、中世美術全体を網羅することは難しいので、「一部分でもいいから、自分が本当におもしろい、楽しい、すばらしいと感じたことだけを、ちょうど授業で学生たちに話すように」という方針で書かれたためか、ケルトもモサラベも登場せず、ビザンティン美術寄りになっている。


ビザンティン美術は日本で二番目に知名度が低い西洋美術と思う。かつて小学館の「世界美術大全集」が刊行されたとき、最終回が「ビザンティン美術」(第1回は「印象派」だった)。ビザンティン美術研究者の希少性から、絶滅するのではないかと心配される先生もいた。


タイトルに「ヨーロッパ」とありながら、いわゆる西ヨーロッパの作例が少ないと思われるかもしれないが、東ローマ美術が与えた影響を考えると、本書の東よりの比重も妥当なものと思えるし、やはり素晴らしい作品は多い。


 ガッラ・プラキディア廟の壁モザイクから(複製)


ビザンティンに優れた作品が多いのは様々な理由を思いつくが、その一つとして霊性の深さがあるのではないかと思う。西はトマス・アクィナスに代表されるような方向を選んだのに対し、東はグレゴリオス・パラマスの方向を選んだ。


著者独自の見解も随所にみられる。最も面白かったのはサン・ヴィターレ聖堂のモザイク(ラヴェンナ)で、皇帝夫妻のモザイク制作の背景を更に一歩踏み込んだところ(58ページ)。


『リンブルクの聖遺物容器』が紹介された章は、最初に訪れたロマネスク聖堂がリンブルクであっただけに、懐かしかった。


ラーン川対岸から、ザンクト・ゲオルク大聖堂、Limburg an der Lahn


ヘッセン州のリンブルク・アン・デア・ラーンのザンクト・ゲオールクでは、トリビューンとトリフォリウムと高窓前の通路が、身廊を四層構成にしているが、この教会堂とラン及びノアヨン大聖堂との類似は久しい以前から認められている。リンブルク大聖堂の建築家がこれらの大聖堂を知っていたことは疑う余地がない。しかし彼がこれら北フランスの教会堂のダイナミックに分節された構造を、それらとは全く異なるもっと重々しくてがっちりしたものに翻訳できたことは驚くべきである。この翻訳はほとんど破綻なく行われた。そこで例外的な敷地に恵まれたこの教会堂は、現在でも下部ライン地方の末期ロマネスク建築の傑作とされる。ラーン川にのぞむ崖上に、密集した群塔をそなえてそびえ立つこの教会堂は、ランやその他の教会堂で胚芽にすぎなかった建築理念を現実のものとした。四層アーケードの構成を袖廊と内陣に適用した手法は、またとくにすばらしい。


クーバッハ、ロマネスク建築、本の友社


聖堂は小高い丘の上に聳え、特にラーン川対岸から見る景観は素晴らしい。オットー朝建築から発展した多塔構成(ランやシャルトルは計画通りに建てられなかった)やフランスゴシックが培った四層構成(ロマネスクで実現したのはトゥルネィとバッハラッハのみ、しかもトゥルネィは垂直性が全くないので四層といってもかなり違う)が高いレベルで実現しているのは奇跡的とさえ言える。


7つの塔が見える唯一のポイント


「聖遺物容器」は、大聖堂から少し離れた美術館の地下に、他の宝物と共に展示されていた。撮影禁止だったし、絵葉書などもなかったので画像はないが(世界美術大全集には大判の図版が掲載されている)、コンスタンティーノポリスで制作された浮彫は洗練されたものだった。展示では裏面もみることができた。ここで述べられた「逆デイシス」(135ページ)は興味深い解釈であった。


残念なのは、カラーの口絵でマリア・ラーハの聖堂が掲載されているのに本文で説明がないこと(前述の聖遺物容器がマリア・ラーハにあったと言及されているのみ)。


Klosterkirche Sankt Mariae, Maria Laach



放射状祭室(209ページ)、左下に修道士の棺

サント・フォワ教会、コンク


一見単純明快な内部空間も位置によっては変化に富んで見える

シュパイアー大聖堂内部(283ページ)


写本は植物誌である『ディオスコリデス』、カロリング朝トゥール派の代表作『グランヴァルの聖書』、『サン・ルイ詩篇』、『ジャンヌ・デヴルーの時祷書』、『ベリー公のいとも豪華なる時祷書』をとりあげているが、もう少し他の写本もみたかった。


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