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アリア


『ゲノフェーファ』4幕のアリア「最後の望みも消え」はヒロインの内面で起こる最も重要な転回であり、音楽も台本もこのアリアに向かって収束していたことがわかる。


アリアは三つの部分に分かれている。

最初はまだ身に降りかかった災難を嘆いているだけで覚醒していない状態。次第に全てを失ったことを人間存在の深淵にたって意識していく。


続いて、十字架と聖母像を見つけて祈る。全てを失わないと顕現しない「転回」がここで初めて起こる。


Was leuchtet hier aus dunklem Versteck?

Ein Kreuz, ein Muttergottesbild!


この作品で最も重要なクレド(信仰告白)


Mich geb' ich hier in Deine Hand.

すべてをあなたの手に委ねます


音楽はヴァーグナー流の劇的さは全くなく、弦と木管楽器がやさしく寄り添う(pp, dolceと指示)。

「委ねる」ことについて、マイスター・エックハルトは「神を得ようとするならば、神を捨てなければならない」と述べた。こんなに美しく「委ねる」ことを表現した作品は他にないと思う。


最後のクライマックス


Wie wird die Luft von Tönen wach, 

wie weh'n zum Herzen sie mir mild!


一人の人間に真の覚醒が起こり、そこに立ち合っていることの凄さを自覚するべきである。


「美しい響きで大気が目覚める」の音の重なり!


第4幕スコア

アリアから、 Wie wird die Luft von Tönen wach,…


Wie wird die Luft von Tönen wach

岩にも森にもその響きがこだまして


の詩句はオペラより20年前に世にでた『ファウスト』終幕場冒頭と反響しあっている。


Waldung, sie schwankt heran,

Felsen, sie lasten dran, 

風に揺らぐ森、こなたにひびき、

よりそう岩野かずかず、森を重く支え、


さらには、フランスでは珍しい、森の画家ルドンとも。


W1676 樹

森の樹、ルドン、W1676


シューマンは半音階的装飾音の大家であった。それと、彼の豊かな多声的書法とがあいまって、大胆で新しい音の出会いが生まれてくる。彼の作品では、保続音上の和音がかずかずの集合音をつくりだし、ときには多調性すれすれのところまでゆく。さらにシューマンは、ピアノでよい響きが得られるように音を配合する点で、ショパンと同程度に微妙な感覚をもっていた。和声と対位法ときわめて独創的なリズムとの三要素を同時に使いこなす腕のさえという点で、シューマンのいくつかのパッセージにみられる書法の美しさに匹敵する者を捜そうごすれば、ヴァーグナーの「四部作」を待たねばならないだろう。

オリヴィエ・アラン、和声の歴史、111ページ、文庫クセジュ、白水社


最も重要な Handlung は事実上ここで終わる。


フィナーレの合唱、この部分が本質的に「祝祭」であること、作品の内に立ち、その深淵から現実に戻るために配慮された時間であること、を考えれば内容や長さがぴったりだったことに気がつく。



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  • 2019.06.28 Friday
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