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修道院の園芸1

 『カドフェル』シリーズの主人公はイングランドのシュルーズベリにある聖ピーター・聖ポールベネディクト会修道院(現在は教区教会として残っている)の薬草園を任され、東方から持ち帰った貴重な植物や珍しい薬草を育てている。その庭はシュルーズベリだけでなく、近隣の修道院にも知られていた。シュルーズベリの修道院には果樹園、野菜畑、麦畑があり、修道院長専用のバラ園もあった。


旧シュルーズベリ修道院聖堂(1920年頃)

身廊と交差部はカドフェルがいた頃のもの


修道士カドフェルの映像から

ドイツロマネスク風の二塔型ファサード


修道士カドフェルシリーズ『門前通りのカラス』(社会思想社、現代教養文庫)掲載の修道院付近地図をGoogle map に重ね合わた。教会の大きさと傾斜を除けば、現状とほぼ地形や道路が一致する。赤印の部分がカドフェルの薬草園、現在は線路になっている。現代教養文庫は光文社に版権継承。


修道院の庭では聖堂に併設された廻廊が最も重要な空間である。廻廊以外にも庭と呼べる空間があり、カロリング時代に制作された「ザンクト・ガレンのプラン」にはハーブ園が植えられた植物と共に詳しく記載されている。


モワサックの廻廊


フォンフロワドの廻廊、中世のハーブ園が復元されているが、ハーブ園は外部に置かれることが多い。


「ザンクト・ガレンのプラン」はハイトー2世修道院長のもと、ライヒェナウで制作され、修道院の実際的というより理想的プランを示している。このプランを見ると修道院にとってハーブ園が必須のものであったことがわかる。


ザンクト・ガレンのプラン、左上にハーブ園がある


「ザンクト・ガレンのプラン」からハーブ園の部分


「プラン」が制作された少し後にライヒェナウの修道院長となったのがヴァラフリート・ストラボで『カール大帝伝』、『幻視』などの著作でカロリングルネサンスを代表する著作家の一人とされる。そのヴァラフリートの詩作品に、Hortulus『小さなハーブ園』と呼ばれる小品がある。残念ながらHortlusはまだ日本語に訳されていないが、園芸へのオマージュであり、ハーブ園に植えられた植物一つ一つを詩にしている。


「プラン」のハーブ園の部分をみると、Salvia, Rosa, Gladiola, pulegium, lybisticum, foeniculumといった植物が植えられているのがわかり、Hortulusともかなりの植物が一致する。


例えば官報でも使われるウイキョウは「ここでも名誉を隠さず際立ち」と讃え、甘い香りがし、消化器系疾患に効くこと、根をワインと混ぜると百日咳に効く、というように特徴と効能を詠う。一方薔薇では、聖母の純潔性を象徴するとして(薔薇を聖母の象徴とするのが流行するのはまだ先のこと)、讃えている。ヴァラフリートはたいへんな園芸マニアで、栽培のノウハウを実際の栽培から培っていた。


ウイキョウ、Foeniculum


ライヒェナウのマリーエン修道院には、聖堂の北側に「ザンクト・ガレンのプラン」とHortulusの内容をもとにしてハーブ園が復元されている。


ライヒェナウ島マリーエン修道院の航空写真、○が復元されたハーブ園、Google map


ヴァラフリート・ストラボのハーブ園、左に聖堂がみえる


これもハーブ園の作物


これらのハーブは料理や治療に用いられた。ライヒェナウ派の写本挿画の画材としても用いられたかもしれない。記述の多くは古典古代作家(プリニウスなど)に依っているのが、民間伝承をもとにしたと思われるビンゲンのヒルデガルトの植物学と違うところである。


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  • 2017.10.17 Tuesday
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