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ヘッベルの『ゲノフェーファ』


50年以上絶版になっているヘッベルの戯曲『ゲノヴェーヴァ』を入手できた。昔なら古本屋を一つ一つ探さなければ見つけることはできないので、ネットの恩恵である。


吹田順助訳、昭和26年第2刷


『ゲノフェーファ』悲劇、全5幕

Christian Friedrich Hebbel (1813 - 1863)

Genoveva. Eine Tragödie in fünf Akten. Hoffmann & Campe, Hamburg, 1843.


ヘッベルは1813年生まれ、ヴァーグナーやヴェルディと同じ年である。戦前は盛んに翻訳が出版されていたようであるけれども、現在入手できるのは岩波文庫の短編集くらい。『ゲノフェーファ』は『ユーディット』に続く2作目の戯曲、1841年に完成された。


Friedrich Hebel, Karl Rahl, 1855


劇はおおむね伝説に従っている。

第1幕 宮中拍ジークフリート出征、ゴーロは妃に恋心を抱く。無茶な冒険。

第2幕 城内の生活、迷い込んだユダヤ人。

第3幕 ゴーロの乳母カタリーナとその姉マルガリータの登場、ゴーロの告白と拒絶。

第4幕 牢に入れられた妃、子を産む。陰謀は進みマルガリータは宮中拍に幻影を見せる。

第5幕 森の中で妃と子は処刑されかけるが逃れる。ゴーロは破滅する。

幕番号なしの「後のゲノフェーファ」が続く。七年後の森、狩で森に来た宮中拍と再会。


いまだ大人になりきれていない時期にあるゴーロの、抑えきれない不安定な情念に破滅していく姿と、試練のたびに美しくなっていくゲノフェーファが対照的である。


ゴーロ(ひとりにて) おれは少年時代に一つの絃樂器をもっていた。そして非常にそれが好きだった……ところがある晩、絃をかき鳴らしながら、ひとり寂しく林を迷うて行くと、ふと絃の調べが慄然とするほど、ふかくおれの心に突き通ったのだ。眼は涙に濡れ、冷たい戦慄がしきりと體の髄を通して忍び込んだ。もとよりそれは何とも言えない氣持だった。永いあいだ、おれは絶妙な死の大歓喜を人しれず吸い込んだ。しかもそのあとでおれは歯を喰い縛りながら顫へ上った。絃をたち切り、樂器をうち砕いた。それからというものはおれは決して、ほかの樂器を手に取ったことがないのだ。おれは今日、同じことをせねばならぬような氣がする!(第2幕)


ゴーロ(ひとりにて) この女にぶつかるのは、まるで樂器の絃にさわるようなものだ。返答は一つの霊妙な音調だ!苛責によってこの女はますます美しくなった。この女が死ぬ時には、恐らく最も美しいであろう。(第5幕)



最後の場面、七年を経て再会したジークフリートとゲノフェーファ、ハッピーエンドで終わらないから悲劇である。


ジークフリート 七年の月日、それは十分でなかったか?これから新しい七年が始まるのだ!その七年は最も短い七年なのだ――そなたはまだ心が定まらぬのか?

ゲノフェーファ いえ。いえ!わたしはただ、一瞬間の御猶豫をお願いいたします、ただそれだけをお願いします!

ジークフリート(急いで他の者達と遠ざかる)

ゲノフェーファ(いのりつつ) ただもう七日だけ!人間というものは、私が考えていたほど強いものではありません。ただ七日だけ!それから差し招いて下さいまし、神よ!

ジークフリート(現はれる)

ゲノフェーファ(彼の方に向かって) さあ、御一緒に参りましょう!




シューマンのオペラはルートヴィヒ・ティークの『聖女ゲノフェーファの生と死』 Leben und Tod der Heiligen Genoveva, 1820とヘッベルの戯曲をもとに、友人ライニックが台本を依頼されて作成した。しかし気に入らなかったシューマンが大きく改変した。このためか、出版譜にはライニックの名前はクレジットされていない。


ヘッベルの戯曲とシューマンの台本の違いについては別の機会に。


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  • 2019.06.28 Friday
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